シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

バス停で、元気に老いる秘訣を授かりました

突然の腰痛に見舞われ100メーター歩くのもシンドイ時期がありまして、久しぶりに何度かバスを利用した時のことです。

バス停に潜むびっくりな妖怪(女性)三人に出会いました。

 

一人目の妖怪

ベンチに座りひとり静かにバスを待っていた時のこと。

あと5分くらいですかね~?

独り言でもなくバスストップの時刻表を見ながらさりげなく声をかけてきた妖怪、じゃなくて女性。

肩までの髪の毛。結構堅くなっているとみえて揺れていません。

私と同年代の匂いがします...60代前半?

顔を上げて反応すると、立ったまま話し始めました。なんと、奇遇にも足を痛めて整形外科に通っているんですと。

整形外科!

まさにワタクシも今現在タイムリーに整形外科に通っております!

どこに通っているのか気になります。同じところかな~。尋ねようとしましたが、しかし!状況が許しません。

聞こうと思って「あ…」と口を開けますがタイミングが合いません。

彼女の話に切れ目がないのです。

これは食い込めないなー。

聞きに徹しよう。

そう決めて、ほーとかへ~とかうんうん頷きながら数分が経過。

私はね、○○整形外科に通ってるんだけど、いいですよー。親切。でもね、×××は良くない。あそこはね~...と話は続く。

なるほど、なるほど。これこそ、まさに「おばさん力全開の口コミ」

私の行ってる△△△医院(前回に登場。バッタ先生の病院)はどうです?と聞きたくてウズウズしましたが、口をはさむ余裕もなく、話題は次に移っていました。

私、これを持ってるの。

ふっくらした胸の前に、いつの間に出したのか手品みたいに両手で定期入れを掲げ、にこにこと見せてくれます。

70歳過ぎたらね、この敬老パスをもらえるんですよ。収入に応じた金額を支払うんですけどね。うふふふ。

バスの高齢者向けフリーパスです。

これがあるから乗るんです!そうでなければ乗りませんよ。歩きます。そういった心の声が聞こえてきました。

へーっ!そうなんですね。

そこまで個人情報丸出しにしていいのかな~、でも教えていただいて嬉しい。

などど思っているうちにバスが到着。

見ず知らずの私に、通っている病院から敬老パスを持っていることまでしゃべり倒し笑顔で去って行くこの破天荒な明るさとコミュ能力。

凄すぎですが、それよりも、なんですって?

70歳過ぎたらね・・・ってことはですよ、なんと彼女70歳越えてるってことです。

どう見ても60代にしか見えなかったなー。

 

二人目の妖怪

バス停に到着すると、ラッキーなことにベンチが一つ空いていました。

普段は座ることなどないのですが、腰痛真っただ中、よっこらしょと腰掛けましたら、お隣に小柄なご高齢の女性が座っていました。

つばの広い帽子をかぶり、荷物のたくさん詰まった買い物袋を携えています。

ぼーっとバスの来る方向を眺めていたら、なんとなく会話が始まっていました。

いつもはね、歩くんですよ。

今日はたくさん買い物しちゃったから。

聞けば、私と同じバス停で降りてさらにそこから5分は歩く距離です。

普段の私でも歩きたくないな、と思うくらいの距離です。

その距離を普段は歩いていると言います。

うそでしょ。なんという健脚!

びっくりしている私に追い打ちをかけるように彼女は言いました。

わたし、87歳なの。

そう言って、うっくくくくと笑います。

見えない見えない。

せいぜい、70代ってところ。

その後、若干混んでいるバスの中で、重そうな荷物をぶらぶら揺らしながら吊革につかまっている姿は、「気丈」という文字そのものでした。

 

三人目の妖怪

バスを待つ長い列の後方でぼーっとしていると、

そろそろ来るのかしらね。

私に問いかける声がします。

遠くで信号待ちしているバスの顔が見えていたので、もうすぐ来ますよと振り返ると、背中が丸くなった小さなおばあちゃまです。

大きな買い物用の白いカートを引っ張っています。

悪いけど、これ、バスに乗る時に持ってくれる?

娘にでも言うように全くフツーにニコニコと笑顔で頼んできました。

普段の私なら「もちろんいいですよ~」となるところ。

悲しいかな、腰痛で自分が乗り込むのも必死な状況。謝るしかないです。

実は今、腰痛で持ってあげられないんです~。ごめんなさい(涙)

ほんっと申し訳ないです。

すると、おばあちゃま、あら!と驚いて、自分こそ不躾にお願いしちゃってごめんなさい、と丸い背中を起こして揺れながら謝るように左右に手を動かします。

そこから何度か、いやいや~こっちこそすみませんの応酬が行われたあと、

あの言葉が!

バス待ちの列が長いから、すぐ来るのかなと思って...

普段は歩くんだけどね。

出たー!

普段は歩いています、これ、前にも聞きました。

腰痛でなければ健脚を自負する私でも、荷物が多い時は乗りたいなと思う距離。

歩いてるんですか?

そうそう、歩いてるの。

すごいです。

さらに続けて言いました。

私ね、90なの。

え? 90歳?

そう。うふふふふふふ。。。

ひえ~!見えない見えない。

せいぜい80歳ですよ。

こんな年寄りを野放しにしていていいのかー!?とシュプレヒコールを叫びたい年齢ですよ。今年91になる私の母は施設でひっそり暮らしているというのに、90歳でこの元気と自由な暮らしを楽しんでいるのです。

到着したバスは、幸運にも乗り口が低いタイプのノンステップバスでした。

せめてもと先に乗っていただいて、お互いにスムーズに乗ることができました。

乗るとすぐに席を譲られていましたが、「すぐに降りるから大丈夫です~」と言いつつどうぞどうぞと勧められて、あらあらすみませんねといった風情でニコニコ座っていましたよ。

良かったですね~と声をかけて奥へと乗り込んだ私です。

 

私の母もそうですが、昭和初期の人たちって、自分の年齢を言うときに数え年で言うんですよね。なので、母の年齢はいつも実際の年齢より2つ増しでした。

しかし、それを抜きにしてもこの三人の妖怪、じゃなくて女性のたくましさ。

 

元気でいられる秘訣を知った気がしました。

・健脚

・気取りのない性格

つまり、

・健康でたくさん歩ける足腰を維持していること。

・誰とでも心を開いて話せる大らかなコミュニケーション能力をもっていること。

・状況に応じて無理せず臨機応変に対応できること。

 

ああしかし、悲しいかなワタクシの腰はすでにガタがきております。

自分の筋力と足腰を過信して無理を重ねて来たせいです。

どうか、皆さまは、決して体に無理をなさいませんようお願いします。

「年を取ってから出る」って、シミだけじゃないですよー。