シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

冷たい雨の朝に

雨の日の朝。角を曲がると、前を歩いている人の姿が見えました。

髪の毛をキュッと縛って、肩にかけた大きなマザーズバッグが傘からはみ出ています。コートの襟を立て、胸に埋めるようにして大事そうに赤ちゃんを抱いています。時折り首を傾けて赤ちゃんの様子を覗きながら急ぎ足で雨の中を歩いています。

こんな雨の降る寒い朝に、まだ3ヶ月も経っていないような小さな赤ちゃんを抱いて急いで歩いている。

赤ちゃん、具合が悪くて病院に向かっているところだろうか?

それとも、保育園に預けに行くとか?

どちらにしても楽なことじゃない。

 

数メーター先には、黄色と緑色のカラフルで小さい傘が歩いているのが見えました。すぐ後ろを、ベビーカーを押しながら傘をさして歩いているスーツ姿の若いパパ。

さしている傘は、ほぼベビーカーに注がれており、パパの後ろ姿に雨が降っています。

間違いなく保育園か幼稚園に送ってからのご出勤と見えます。小さな傘をさして歩いている上のお子さん、えらいなぁ。でも気が変わって突然駄々でもこね出したらアウト。そんな状況の中、小さな傘の歩みに合わせて粛々とベビーカーを押しています。

 

赤ちゃんを抱いて大きな荷物を持つ。

小さな子どもを歩かせながら、ベビーカーを押す。

それだけでも、もう大変です。

それなのに、こんな冷たい雨。

傘までささなきゃならない。

その横を、容赦なくすり抜けて行く車。

 

知らない人には、ただの景色。

ほほえましくて、うらやましい景色かもしれない。

けれど、当事者にしかわからないことがあるよね。

なんてね。

自分が大変だったからって、さっきのママとパパが大変だとも限りません。

ただの思い過ごしかも。

 

「喉元過ぎれば熱さ忘れる」と言いますが、手のかかる赤ちゃん時代が終わると、一緒に過ごす楽しい時間の方が増えてくる。

だから、子どもがどんどん少なくなっても、当事者つまり声をあげる人も減るのかな。

なんだか、複雑な気持ちになった冷たい雨の降る朝でした。

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