シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

大好きな人に大好きと伝えよう

 

3年前に、突然、訃報が届いた。

大好きな大好きな友人の。

 

よくドラマやなんかで、悪い冗談はやめて と耳にするが、あれは言い古されたセリフだが本当だった。

やめて、と言うより、信じたくなかった。

嘘だと思いたかった。

冗談でも嘘でもない。悲しいけど本当なんだよ、そう言われて一晩中泣いた。

魂だけでも、幽霊でもいいから、ここへ来て欲しい、そう念じたが、現れなかった。

 

彼女とは、小中学の4年間を共に過ごした。

父が転勤族だったので、私と彼女が一緒の時間を過ごせたのは、たったの4年間。

N子はソフトボール部、私はバスケ部。

部活は違ったけど、二人の時間の記憶は深い。

 

父の転勤で、お待ちかねの修学旅行もある中学3年に上がる前、一番楽しい時に彼女と離れた。

その後、何度か互いの家を訪ねたり、大学生の頃は一緒に旅をした。

目の前の小さな事をうひょうひょ面白がれる人だった。

でっかいカメラで写真を撮るのが好きだった。

何にでも常に全力投球だし、必死で何かをしていても言動が面白すぎだし、誰の悪口も言わなかった。

 

そんな人だったが、一度だけ、終わった後に、本当はやりたくなかったと言ったことがある。

生徒会長の立候補だった。

あまり乗り気でなかったけど、その人望でみんなに祭りあげられてしまったのだ。

私も、応援演説するからと彼女を説得した。

立候補者の演説当日、もっと影響力のある男子が他に何人も立候補して、すっかり緊張したのか彼女の影は薄くなった。

生徒会長には落選した。

その時だけは、小さな声で俯きながら本当はやりたくなかったのだと漏らした。

それを聞いた時の胸の痛みを鮮明に覚えている。

 

明るくて積極的で賢くて笑顔が弾けるみたいに広がるのが印象的で、一緒にいるだけで楽しかった。

 

その後、それぞれの人生を生き、音信は途絶えた。

 

ある日、何気にFacebookで名前を検索したら、みごとにヒット!

もしかして、N子〜???

メッセージを送ってみたら、

くらすこー?! わたしわたし〜っ!!!

あの頃と、全く変わってなかった。

 

すぐに機会を作って何度か会った。

高校の教師として長崎に流れ着き、一人+猫2匹で生きていた。

良い先生なんだろうな〜、子供たちに囲まれて笑顔でしゃべったり笑ったりしてる顔が容易に想像できた。

うちにも来てくれてアップで写真を撮ったら、それ見て、誰?このオバサン!だれ? 私か!って笑ってた。

 

生涯に一度だけした本気の恋の話もしてくれた。

飼っている猫ちゃん達のことを愛しそうに教えてくれた。

教え子たちとのエピソードをひとりで大笑いしながら話してもいた。

 

最後に会うことになったのは、ちょうど土曜日。

東京に出張で来たけど、思いがけず時間が空いた。宿泊のホテルは品川で、今は大手町にいると言う。

もっと早く連絡してよー。なんでうちに泊まらない。なんて言いながら、ソッコーで都内に駆けつけた。

二人で皇居をゆっくり散歩しながら絶え間なくしゃべって、美術の時間に共作した立体凧が一位を取ったことを二人で思い出した。自撮りして、食事して、また、色んな話をして、また会おうね、定年退職したら一緒に旅行しよう、そう言っていつまでも手を振って別れた。

 

それが、最後になった。

 

一年後のN子の誕生日にFacebookを覗くと、彼女の教え子が長い長い書き込みをしていた。

あの時、先生のおかげで乗り越えられた。落ち込んでいた自分にサラリと声をかけてくれた。そこから立ち直るまでの経緯を泣きながら切々と綴っていて、それを読みながら一緒に泣いた。

あったかい先生だったに違いないとは思っていたけど、間違いなかった。

 

そんなこんなを思い出すと泣けてくる。

そして、泣きながらこれを書いている。

 

先日、やっと、同級生U美の計らいで彼女の墓参りができた。

彼女の骨を前にしても、そこにいるとは思えなかった。

手を合わせたが、きっと、この中にはいないよね、その辺を飛び回ってるに違いないよね。案内してくれたU美と笑い合った。

 

予告もなしに逝ってしまったけど、ひとつだけ良かったなって思うことがあるんだ。

彼女の骨の場所を見つめながら言った。

二人で皇居を散歩した時にね、

「私ね、中学生の頃にたくさんの人の中からN子を見つけて友達になった自分を褒めてやりたいんだよね。そして、今でもN子が友人だってこと誇りに思うよ。」

そう、本人に伝えたんだよね。

それだけは、良かったなーて思う。

伝えておいて良かったなって。

N子は、ありがとう、って言ってね。。。眩しそうにちょっと笑ってね。

キュッと口を結んでこみ上げてくるものを堪えながらそう言うと、一緒に来てくれたU美はうんと小さくうなづいたまま、じっと前を向いていた。

それから、気が済むまで二人でそこに立っていた。

 

今思えば、くさいセリフだけど、心からまっすぐに言えた。

なんの躊躇いもなく。

言っておいて良かった。

言葉にしておいて良かった。

伝えておいて良かった。

 

N子、私は今でも君に、会いたいよ!

友達でいてくれて、ありがとうね!