終点の駅で、滑り込んで来た電車から人々がぞろぞろと降り終わるのを待ってゆっくりと乗りこんだ時のことです。
なんせそこ終点で始点、なので乗ってきた人全員降車するから座り放題。
どこに座ろうかな~なんて車内を見渡していると、端っこの席で体を二つに折り曲げて眠りこけている若い女の子発見。
これこれ、終点に着いたでござるよ。目を覚まさなければ往復するよーん。
心の中で気軽に思いながら少し離れた席に座るワタクシ。
発車まで5分待ちか~、携帯でも見てるかな。
ふと目を上げると、え?まだ小さく船を漕ぎつつうなだれたままのお姿。
あんれまぁ。
これもう、爆睡でござるな。
よっぽどお疲れなのでござろう。
テールからこぼれた髪の毛が頬に垂れて、顔を隠すように揺れています。
バイトの帰りかな、楽しいデートの帰りかな、それとも夕べ夜更ししちゃったのかな。
足は少しばかり開いているけど、スカートが足首までのロング丈でちゃんと隠れてる。
良かろう。
オバサンはそこんトコ気になります。
しかし待てよ。
見れば、発車時刻まであと2分。
次々に人が乗り込んできて、周囲に座ってしまいました。
あれまー、このまま放っておいたら何往復かしてしまうかも。
そう言えば、子どもたちがまだ小さい頃、「今から帰るよ~」と連絡が来たきり何時間経っても帰宅しないパパ(よその)の武勇伝、聞かされて大笑いしたことあったな~。
車内で爆睡しちゃって自分の駅通り越して何往復もしたり、気が付いたら埼玉まで行ってて帰りの電車が無かったり。
起きなければ起きないで、ちょっとした笑い話になって、人生的に鑑みるとそれもまた面白いしな~。
でも、ちょっと待って。
これから、この駅で誰かと待ち合わせしてたり、今からバイトだったりしたらまずいよね。
どーしよう。
静まり返った車内で、突然ワタクシがすっくと立ちあがってトコトコ近寄ってその子に話しかけるのも目立つなぁ。
起こすべきか、起こさざるべきか、それが問題でござる。
あ、もう発車1分前。
起きる気配なし。
気が付くと、その子の肩を叩いている自分がおりました。
ここ○○よー。終点だけど大丈夫ー?
ハッと目を覚まし、小さく早口で「すみません!」と慌てて降りて行きました。
一旦、ホームであたりを見回し出口の方へ向かって行きつつスマホをいじっていたお姿だけでは、ここが彼女の目的地だったのか、すっかり乗り過ごしてしまったのかは不明。
そして、起こして良かったのか、起こさない方が良かったのかもまた、不明でございます。
ひとつわかったことは、オバサンの行動について気にする人は誰もいなかった、という良かったような寂しみのような事柄、でございます。