シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

早生まれさんの悲哀を知る

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前回お話ししました、認可保育園で新しい生活を始めたリトルD(以下 ルD)ちゃん。

動きもゆっくり一つ一つ確実、お友達にオモチャを横取りされても困った顔で眩しそうに笑って様子を見ている。

穏やかで何事もじっと観察して行動する落ち着いたお子ちゃまなんです。

 

それが、夕ご飯を頑なに食べません。

何を差し出しても、気に入らない様子でいやいやをしたり、べろべろと吐き出したり。

小さなお手々で払いのけたり。

ついに、お茶の入ったコップをブンブン振り回したあと、床にぶち投げました。

大きな音を立てて転がったコップ。

飛び散るお茶。

一瞬止まるママと私とルDちゃん。

 

その日は、慣らし保育も後半に入り、園でお昼ご飯、お昼寝、おやつを済ませて帰宅というスケジュールでした。

普段だと、元気なハイハイであちこちに動き回り、笑顔いっぱいで遊びまわるのですが、その日は何だか元気がありません。

笑顔も少ないし、動き回りもしないし、集中力もありません。

何だかいつもと違うな、そう感じていました。

大好きな絵本もすぐに飽きて、積み木を舐めてうっとりしています。

あれ?

お腹が空いてるのかな?

園でおやつも食べてるはずだけど、小腹がすいた?

普段から食の細いお子ちゃまです。

赤ちゃんせんべいを与えてみると、積極的に受け取ってあっという間に食べ終わり、満足したようにゆっくりしたリズムで遊んでいたと思ったら、ふいに両手を広げてきました。

抱っこしようね。

抱っこして小さく歌を歌うと、胸に頬をつけておとなしくしています。

そのうち、まばたきも少なくなり、やがて眼を閉じました。

そのままそっとソファに腰掛けると、約一時間ぐっすり眠りました。

ついでに、ワタクシも一緒に寝ましたけど(えへへ)あったかくて眠くなるんですよね〜。

 

6時をすっかり回った頃、戻ってきたママの声を聞いて、ぼんやりと目を覚ましましたが力ない感じでまだ眠そうにしています。

お熱も計ってみましたが、平熱。

園でのお昼寝が足りなかったかな。

お腹が空いたのかも、と、ママが大急ぎで用意して食べさせていた最中でした。

 

バーンっ!

大きな音をたてて転がったコップの惨状を見てしばし呆然とするも、ハッと我に帰ったのか、その後は、いつもの冷静さを取り戻し、少しずつ口に入れたものを飲み込み始め、最終的に「そんなに!?」というくらいたくさん食べました。

 

たらふく食べたらすっかり機嫌を取り戻し、いつも通り笑顔いっぱい元気よく遊び始めました。

触ってみると、小さなお腹が小鳥の胃袋みたいにぷっくら膨らんでいます。

たっぷり食べたね。

お腹、すいてたんだね。。。

 

 この3月で一歳になったばかりのルDちゃん。

そうなんです。

早生まれ、なんですよ。

まだ、ひとりで歩けないし、お肉だって野菜だって死ぬほど細かくしたものしか食べられません。

スプーンだってまだ満足に使えない状況です。

それが、「一歳児」というくくりで分けられ、ほぼ2歳といってもいい子どもたちと同じスケジュール、同じ食事で過ごしているんです。

しかも、10人のそのクラス、早生まれはルⅮちゃんひとりだけ。

一人で歩けないのもルDちゃんだけ。

この月齢の子どもって、一カ月でさえ成長度合いが違います。

本人の頑張りではどうしようもない「差」なんです。

ふにゃふにゃの生き物で生まれ落ち、だんだんと人間になっていく過程で、飛び越えられない時間の差なんです。

 どうしようもない発達の差があるのに、一年近く月齢差のある子どもたちと同じように生活しなければならないのです。

 

以前の認可外保育園は、とても少人数で先生の数も充分、先生方にゆとりもあるので子どもだけでなく、親の心のケアまで行き届くようなところでした。

この時期の親の心って、子ども以上に不安定で自信がないもの。

ママとパパは、どれだけ助けられたことか。

しかし、そこに通い続けることは不可能でした。

あくまで、どうしても認可に入れない子どものセーフティーネットであり、「どうしても認可保育園に入れませんでした」という証明書が何枚も必要だからです。

 

ママは言います。

早生まれに産んだ私たちが悪いの、そういう世の中なの、現代は。

はいれただけでも御の字だから。

 

確かに、何人ものお子さんが保育園待ちをしているのが現状。。。

 入園できただけ幸せ。。。

だけど、生まれた日が早生まれと認定される時期だったからといって、決して何も悪くない。

 

その日の献立表を確認してみると、ルDちゃんがなんとか食べられるものは、オレンジとスープ、だけ。

あとは、お肉の下にあるご飯くらい。

ご飯粒も、転園するために3月から大急ぎで食べる練習をして、やっとこさ食べられるるようになったばかり。

お迎えに行った時には、歩き回ったり駆け回ったりして遊んでいる子供たちを遠目に見ながら、隅っこで一人、ぼ~っとおもちゃを握っていたルDちゃん。

 

お腹が空いていたし、色んなことを我慢していたんだね。

小さな頭でなんとか頑張っていたんだね。

 

そのことを私たち大人に気づかせてくれたんだね!

偉かったね!

 

決して、転園先が悪いのではありません。

先生方は、目も気も配って一生懸命にやってくださっています。

「なんでも言ってくださいね」と優しい言葉もかけてくださいます。

ありがたいです。

 

夫婦ともに働くのが当たり前になってきている現代で、子どもを育てるのはまだまだ厳しい、その現場を垣間見た気がしました。

子どもは、心を持った人間。

オモチャやロボットみたいに思うように扱えるものではないです。

 

せめて、2歳くらいまでは、

発達に合わせてクラスを分ける

とか、

クラス分けの月齢をもう少し短いスパンにする

とか、

そんな細やかな配慮ができたらいいな、と思いました。

でも、一番は、保育園を「選べる」時代が来るといいなということです。

 

新設される予定の「子ども庁」に期待。。。………

 

ルDちゃんには、帰宅時のルーティーンとして、

今まで以上のビッーグでローーーーーングなハグと、

お腹の膨らみ(お腹の空き具合)を触って確認する、

この2点を当面の特別事項として付け加えることになった模様です。