シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

シニア一人旅🍁長野への入り口は外国人からはじまった

今までのように元気よく動き回れる日がいつまでも続くわけじゃないこと、いずれ今の自分でない日がやって来ること、そういう漠然とわかった気になっていたことがググっと現実的に感じられたのは、腰痛で歩くのもやっとだった2ヶ月前のことでした。

いわゆる健康寿命ってやつの期限が思ったより早く訪れるかもしれない・・・

足腰が健康だからできることをやっておきたいな。

 

てなわけで、大好きな旅に出ることにしました。

ただ行ってみる、それだけを目的にして自由に出かけてみよう。

幸いなことに、定年後の第二の職場では、平日に数日まとまった休みが取れます。

ていうか、わざとそういう働き方ができるところを選んだのであります。

その自由な時間を使わない手はありません。

 

そう思い立って、初めての土地にひとり旅をすることにしました。

何も知らない、わからない、仕事でもない、待っている人もいない、そんなところへ行ってみよう。

 

始めの一歩は、長野県の小布施町に決めました。

北斎の直筆画が見たいとかそんな高尚な目的はもちろんなく、なんとな~くただ行ってみたいから、それだけだったのですが、思いがけず目的ができてしまいました。

栗です。

栗のシーズンでございます。

栗が食べたい!

でっかくて甘い栗が食べたい。

 

そうなるとついでに、松本と長野にも行ってみたいな。

欲が出ました。

欲にまみれております。

ふ~むと地図を見ながら考えていたら閃きました。

長野市に拠点を置いて両方に行けばいいんじゃない?

調べたら、どちらにも行ける位置にあるのが長野。

小布施・松本・長野へ旅に出るぞ~!

 

実は、ぎゅう詰めの満員電車で東京駅まで行くのが面倒くさいという理由で、甲信越方面へはなかなか足が向かなかったのです。それを松本フリークの友人に言ったら、大宮から乗ればいいよ、新幹線代も安くなるしとアドバイスをくれました。

真ん中から攻めずに周りこんで攻めるというわけじゃな。なるほど!それで行こう。

決まり。

大宮から新幹線あさま号に乗ることにしました。

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待ちに待った当日の朝、順調に大宮に到着。

大きな駅です。

改札内の商店街エキュートもあります。

そこにサンドイッチ屋さんメルヘンがあるのを発見。

フルーツサンドの棚に柿を使ったサンドが並んでいます。いいね~とミックスサンドとその柿のサンドイッチを買ってウキウキと列車に乗り込みました。

車窓の山々を楽しみながらサンドイッチを頬張る・・・うひひ。

窓から見える景色で旅情に浸ろうと、行きだけは窓側をわざわざ指定したのであります。

えきねっと予約だから「窓側」とだけしか指定できなかったんですけどね。

2席つながりの窓側だといいな。

楽しみ~!

ルンルン気分で乗り込み席を探していたら、悲しいかな3席つながりの窓側でした。ちょっと息苦しいなぁなんて思いながらシートを見ると、

あれ?

え?

席が空いてない。

ふさがっている…

どゆこと? ? ?

結構ご年配のおじさんとおばさん。

2人の膝の前の網に弁当の空き箱が刺さっています。

ほんでもって、二人してんーごんーごと気持ち良さそうに眠ってる。

お弁当食べて眠くなったんかーい!

心の中でツッコミながらも、いや待て私が間違えてるのかも。

駆け巡る脳内の思考。

はっと我に返って気がつくと後ろに列ができています。

す、っすみません。

とりあえず、空いている通路側席に体を入れて後続の人々をやり過ごし切符を見直すことにしました。

...しかし。

何度みても、やっぱりそこです。

なんだろうこれは?

脳が何かのトラップに陥ってるのかな?

年だし、ね?

立っていても仕方ないし、とりあえずこのまま空いている通路側のこの席に座ろう。

そして、ゆっくり考えてみよう。

 

座ってから考えることしばし。

気持ちよさそうに寝てるし、まあいいか。当分このままで。なんて思っていたら、真ん中席のおばさまが目を覚ましました。

すぐ降りるなら、そのまま座っててもらおう。

そう思って、どちらまでですか?

さりげなく声をかけると、驚いた様子で、アイキャンノットスピークジャパニーズと言うではありませんか!(実際には訛った感じ?のアイカーント…)

日本人じゃないんかーい!

若干濃いめのお顔だけど、いやどう見ても日本人っぽいし、え?どちらのお国の方?

東南アジア方面?中東に近いアジアの国?

私の方が驚きました。

仕方ないので、脳内を引っ掻き回して取り出した英語らしきフレーズで、どこまで行くのか尋ねてみたところ目が泳いで困惑しておられます。通じなかったのかな…?

と次の瞬間、慌てた様子でおばさまのお隣、つまり、窓側でごうごうとイビキをかいて寝ているおじさまを揺り起こし、なにやら早口でしゃべりかけました。

なんか面倒くさい日本人に話しかけられてるんだけどどうする?とか言ってるのか?などと思っていたら、バッと振り返って言いました。

ニャーガゥーコォゥ。

...ニャーガゥーコォゥ…にゃーがーこー?

?…

にゃーがー…ああ!なーがー!ながの、長野ね?

笑いかけるとニッコリして頷きました。

行き先をおじさまに確認してたのね、そかそか、うんうん。

って、あなた!

降りるまで一緒やーーーん!

あかん。あかんです。

車窓の山々をニコニコ眺めながらメルヘンのサンドイッチを頬張る、、その夢が今まさにガラガラと崩れ落ちて行く音が転がり落ちる柿の映像とともに響き渡りました。タララーンハナカラギューニューのメロディーに合わせて頭の上に降って来る黒い線。

どうしよう。

と。

すっくと現れたのが、あの、冷静レイ子様です。私の中のどこかにお住まいになっていて、ピンチになるとスススーっとお出ましになられる、あのお方。

サッと切符を取り出して彼らの目の前に葵の御紋のように振りかざすや、

あのー、すみません、そこ、私の席です。

そうスラスラと述べておられました。英語で。

ことわっておきますが、言ったのはワタクシではありません。レイ子様です。

 

するとどうでしょう。

お二人は、オー!と言うや、あっさりと立ち上がりワサワサと移動を始めるではないですか。

脳内ではレイ子様が用が済んだとばかりにこれまたアッサリと姿を消し去り、いつものワタクシが舞い戻ってきておりました。

え?いいの?悪いわね〜、ごめんなさいと声をかけたいところでしたが、どう言えばいいのかわかりません。仕方なくマスクの上でもわかるように目で笑いかけながら、サンキュー!とだけ伝えました。

 

おじさんとおばさんらによる3人がけ席内の大移動が滞りなく終了し、あーやれやれと落ち着いてみると、この人らどちらからお来し?と気になり始めました。

気になり始めると止められないのがワタクシです。

あなた方、どちらから来られたんですか?

再び脳内の英語をかき集めて、お隣りになったおじさまに尋ねたところ返ってきた答えは、

ヌーズィゥランド

ぬーずぃぅらーんど?

かの有名な夢の国ネズミーランドじゃないしね...?

なんとなく訛っている感じだったので、よく聞き取れませんでした。

ぬーずぃらーんど、ってそれ、もーしかして

ニュージーランド

ひつじ〜とかチーーズとか、オーストラーリアのお隣とかの、あそこっですか?

再びの再び、脳内総動員で知識をかき集めて確認すると、うんうんうんと通路側になったおばさまが激しく頷きました。

えー!お顔立ちや体格から、どう見てもアジア・東南アジア方面か中東に近いアジアからお越しになったと思ったわ〜意外〜!と脳内のワタクシは驚きましたが、そこは口に出さず、この瞬間にニュージーランドとジャパンの友好関係を良好に保つという役割を背負ってしまったわけです、知っている言葉をかき集めて褒めました。国民たった一人ひとりから相手の国に対する好意的な感情が広がって行くのであります。60を過ぎたオバサンとて気を抜いたらあきまへん。たとえ我がシートを侵略されようとも円満に気持ちよくご返還くださったニュージーランド国民です。大切なお客様なのです。

観光かと聞くと、そうだよ、日本、韓国、中国とスリーカントリーに行くんだと指を折りながら教えてくれました。そのご年齢で一気に3カ国とはすごい。しかし、かなりお疲れのご様子でしたので、それ以上の深入りはストップ。

メルヘンのサンドイッチをいただくタイミングを計ることに神経を集中したのでありました。

 

その後、おじさまが再びウトウトし始めました。

チャーンス到来!

今ついにその時が訪れたのです。

ガサゴソとしかしひっそり(ここで目を覚まされたら台無しです)メルヘンのサンドイッチを取り出し、ニコニコ車窓の山々&メルヘンサンドイッチ欲張り頬張り計画の遂行に取りかかりました。

車窓を流れて行く秋深い山々と青い空。

その壮大な景色を堪能しつつサンドウィッチを頬張るワタクシ。

サンドイッチはいつしかサンドウィッチへと変貌を遂げていました・・・

ああ、サンドウィッチ伯爵よ、ありがとう。

むふふふ。

胸の中に湧き上がるワクワクを抑えきれず、悪代官と目配せをする越後屋のように心の中でニンマリしながらサンドを頬張る日本のオバサン。知らぬ間に伯爵の国イングランドとも繋がっていたのであります。

柿サンドは、思ったよりさくさくとしつつも一体感があり、甘くておいしかったです。

あともう一歩パンがしっとりしていたら最高だと思いました。

 

見知らぬところで、見知らぬ人と出会い、未知の味を楽しみ、未知を知って行く。

ああ、なんと旅は楽しい。

ちなみに、これが、柿のサンドウィッチです(笑) ⬇︎  続く…

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