シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

俳優が耳元で語ってくれる「朗読の世界」

ラジオが大好きでよく聴いています。

ほとんど聴かない日はないくらいです。

若い頃は、テレビと違って聴きながら手が動かせるというのが最大のプラスポイントでした。あまり好きじゃない掃除の時は気を紛らしてくれますし、帰宅したあとのもうひと仕事「ご飯のしたく」では時々笑い声をあげたりしながら疲れを忘れて楽しく作業できたりしました。

 

年月は流れ、近眼に老眼が加わり、さらに白内障の手術までした今となっては、本を読むのもなかなかにつらくなりました。

眼が疲れるのはもちろん、変に肩が凝ったりもします。

しかし、ラジオはいい。

聴いているだけです。

目を使わずに済みます。

目を瞑ったままでもいいのです。

 

特にラジオドラマは欠かさず聴いているのですが、現在、絶賛ドはまり中なのが、ドラマでなく朗読です。

これね、もうね、最高です。

なぜかって、指折りの俳優さんが頼んでもいないのに(まあ、ラジオ局の人から頼まれてるんですけど)作品を朗読してくれるんですよ。

 

図書館で借りることができる電子書籍にも、SPEAKという機能が付いているものがあって合成音声で読んでくれるんですけどもね、これね、聴いてられないでございますよ。

せっかくの機能なので使いたいのですけど、ね。

読んでくれてるのが人じゃないですからね。

 

SPEAK機能じゃなくて、オーディオブックと言って初めから「聴く書籍」として作られているものもあります。

まだまだ数が少ないのが難点ですが、タイトルから人が朗読してくれますし、効果音までついています。

しかし、この「ラジオの朗読」に慣れてしまうと物足りません。

なにが足りないのだろうと聴き比べてみると、オーディオブックは読み手の声が良すぎる気がします。

恐らくアナウンサーもしくはその道のプロが読んでくれているのでしょうが、傷つかない人工の氷の上を苦も無くスイスイ滑っている、そんな感じです。

作品に対して変に色を付けないための、わざとの工夫かもしれません。

 

かたや、役者さんというのは、遠慮なく自分の色を投げ込んできます。

私ならこう解釈してこう読みます、そう宣言しているかのようです。

氷張り職人が、丹精込めて歪みひとつなくピリッと凍らせた表面を、遠慮なくガツガツと削るように読み進んでいくのです。

聴いているこっちは、削られて行くその様にグイグイ引き込まれて行くのです。

時には、ガッと削られた氷が飛び散るさまに胸を掴まれることさえあります。

まるで、文章の文字列が本のページからふわと剥がれ起きて空中に飛び去り、代わりに登場人物やその周りの様子を目の前に映し出すかのようです。

 

中でも、今(2023/4月)放送されている「朗読の世界」は脳内ドラマそのものです。

読んでいる俳優さんは、上川隆也さん。

作品は、高村薫さんの「地を這う虫」より「巡り逢う人びと」

一日に15分ずつ。

3日分くらい貯めておいて、一気に聴いて行くこともあります。

一話聴くと次が待ちきれなくなるからです。

もう第五回目まで読み進んでいますが、聞き逃し配信でまだ聴くことができます。

NHKラジオアプリ「らじるらじる」で聴くことができます。

 

「朗読の世界」とは別に「朗読」という番組もあります。

こちらも、前回は岸本加世子さんが読む向田邦子さんの作品「あ・うん」より「狛犬」でした。

現在は、渡辺いっけいさんが読む山本一力さんの「西應寺の桜」ですよ。

 

実を言うと、堅めだったり、若干時代がずれていたりする本はついつい敬遠していました。けれども、こうして個性溢れる声で読んでもらうと、敬遠していたことがウソのように耳から脳内にしっくりと入って来るのです。今まで知ろうとしなかった世界に俄然興味がわきます。改めて紙の書籍を読みたくもなります。敬遠していた著者にも興味がわくのです。

 

別に、NHKの宣伝をしているわけではないですよ。

俳優さんに本を読んでもらえるなんて!

そんな体験、よく考えたら両手を拳に握ってウォーっと唸り上げるくらい胸ワクですよ。

聴きたい時にいつでも聞けるラジオアプリなんて、んなもん無かったですもん。

しかも、耳元ですよ。

しかもしかも、無料なんですよ。

しかもしかもしかも、年齢を重ねてもずっと趣味にできますよ。

ほらほら、聴きたくなってきたでしょ。

 

「ラジオで朗読とドラマを聴く会」を結成して、毎月一回語り合いたーい!

密かに願っているワタシです。