シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

60を過ぎてやっと自分を生きているのだ

帰り道、八百屋の店先を通ると、小さくて茶色のもこもこした犬が後ろ足をつっぱって抵抗していました。

もうお買い物終わったから帰るわよ、飼い主の女性が優しく声をかけていますが、綱をピンと張ってテコでも動かんわい!といった風情。

そこへ、中から買い物を済ませた女性が出てきて、あらあらと声をかけ始めました。

どうやら茶色毛玉ワンコちゃん、その人に喜びながら近寄ったらしく「犬の好きそうな人ってわかるみたいで~。すぐそうやってすり寄って行くんですよ~」飼い主さんの声が、通り過ぎる私に聞こえていました。

軽やかな笑い声と「だってかわいいものね~」などという明るい会話を背中で聞きながら、オバサンっていいなあ~!

口元がほころんでタンポポみたいになっている自分に気がつきました。

初めて出会ったその場で、何気ないけどお互いに気分いい会話ができるって、それまさに「おばさん力」よね~。どうしてオバサンってそれができるんだろう?普段から何気ない日常会話を無意識のうちに研鑚してるのかな。

そんなことを考えて幸せな気分になっていました。

 

家路を急ぎながら、心に訪れたしばらくぶりのこの感覚。

「私」が戻って来てる。。。

「忙しい」という字は「心」を「亡くす」と書くのはそういうことです、なんていう講釈をほとんど聞き流して生きて来ましたが、ああそういうことかと合点がいった気がしました。

どうやらお邪魔なようですねと、どこかへお出かけしていたのかも。

 

三月から四月にかけては、別れと出会いの季節。

ここ数年送る方で気楽だったのに、思いがけず送られる方になりました。

新たな転機が光り輝いているとは限りません、人を不安定にさせるものでもあります。

 

60歳になった時、定年後の継続雇用をしないと決めて、はや4年。

そのまま継続雇用を選択するのは何より簡単なことでした。

簡単だし、安泰。

大きな傘の下で、毎日のルーティンに勤しんでいれば自然に時は過ぎて行く。

 

しかし、それを選ばなかった。

月曜日のあと、まだ火曜日か~と落胆する一週間をあと5年積み重ねて、自分に残るものってなんだろう。

少し多めのお金。これは嬉しい。

職場の人々と交わす仕事上の会話。これも嫌いじゃない。

体力が落ちているから、疲れ切って使い物にならない土曜日。残念。

一週間できなかった家事をやる日曜日。もう明日は月曜日。

たまに行く、食べて寝るだけの旅行。

提供されるキョウヨウ(今日の用)とキョウイク(今日行くところ)、

とってもありがたい、けど。

 

そうやって5年を過ごした先にある本物の定年65歳。

目を細めて眺めやると、ポツンと立ち尽くす自分の姿が見えた。

影だけが長く伸びている何も持っていない自分だった。

 

まだ、体力も気力も残っているこの5年間。

なんだかわからないけど、ものすごく重要な5年間に思えた。

この5年間に、自分作りをしよう。

65歳を過ぎても、その先もずっと人生を楽しんでいたいから。

60歳から? 今さら? なんて笑う人がいてもいい。

誰のものでもない、私の人生なんだもん。

 

そう決めて、なんともう4年が経っていました。

いや~!

色んなことやったし、色んなことありました。

まだ火曜日か~なんて一度も思いませんでした。

やらされてる人生じゃなくて、自分の意思で積み重ねた時間でした。

全ての経験が血となり肉となる感覚。

振り返ると、なんか、何だか知らんけど、輝いておるじゃないですか。

ちんまりした人生だけど、自分で自分を生きていたじゃないですか。

 

大きな会社の傘の下を選んだのも自分でした。

この4年間を選んだのも自分。

でも何かが違う。

なんだ?

 

働き方の照準が違う気がしますよ。

 

提供される何不自由ない、今日の用と今日の居場所。

自分で決めて自分で選択する、今日の用と今日の居場所。

提供されるものと、自分で選ぶもの。

まあ、それができるのも、60歳を過ぎたからだと思います。

 

今回の新しい転機が、自分にとって良かったのか悪かったのか、どう転ぶのかまだわかりません。

何ごともやってみなくちゃわからないです。

新しい出会いがある限り、何かがあるはず。

駄目だったら、違っていたら、その時考えればいいのです。

 

4月も後半になって、少し慣れて自分が戻ってきたのでしょうね~。

お帰りなさい、わたしちゃん(笑)

帰って来た私に、道を尋ねる人が続出!(ウソです。お二人です)

お二人とも、始めて行く場所へ。

そして、そのたびに自然と口から出た言葉。

お気をつけて。行ってらっしゃい!

 

私も、新しい場所へ行ってみます!