心の底から弾けられるかと言えばたぶんノー。
けれども、それぞれ毎日を頑張り通して生き残りました。会いたい気持ちをそろそろと取り出して、会えば家族のように楽ちんな仲間たちと、久しぶりのお出かけを決行することにしました。
たぶん3年ぶりの女子旅。
近場でと伊豆高原へ。
時は6月。梅雨真っ盛り。
伊豆高原へは横浜から踊り子号に乗ると、午前中ゆっくり出ても2時間もかからずに着いてしまいます。
コロナ前は、お弁当を買っておしゃべりに花を咲かせながら列車の旅を楽しんでいたのですが、依然としてまだコロナ。
車内での飲食は遠慮して、お昼は伊豆高原駅の近くでとることにしました。
伊豆高原駅周辺でゆったりとランチできるお店、探しても意外に少ない。
けれど、ひとつだけ気になるお店を発見しました。
本業は、離れのお部屋でお客を迎える料理旅館のようです。
広い敷地には、たくさんの木々。
老舗のような歴史を感じる、奥ゆかしくてしっとりした趣。
そのお宿がランチだけでも来ていいよ、と言っています。
ここどお?
いいね~。
全員で即決。行ってみることにしました。
到着してこの門構えを見ると、一気に気分が高まりました。
使い込まれた暖簾とこん盛り葉っぱに覆われた門をくぐり、玄関に続く小道の緑たちに挨拶しながら中に入ると、なんと広々とした店内。
食事の広間ではなく、お迎えのロビーといった風情です。
落ち着ける背の低い家具。
こだわりのある個性的な絵画の数々。
壁一面の窓は曇りひとつなく磨き込まれていて、毎日の欠かさないお手入れぶりが容易に想像できました。おかげで、お庭の緑が生き生きと見えています。
それだけでもう、来てよかった、そう思いました。
そして、最初に登場したのが、これ。
先付
嶺岡豆腐。花吹雪仕立て。
渋い土物の器に入って和食の顔をしているのに、濃厚なミルクプリンのようです。
そのミスマッチ感で、一発目から頭の上に「!」が点灯。
お出汁もきいているのか複雑で奥深い味です。
向こうの方から「おいしい!」と震える女性の声が聞こえました。
見ると、若いカップルの慎ましそうなお嬢さん。同じものを食べながら、手でお口を押さえています。
思わずこちらも、ふふふ。わかるわかる。
八寸
いやもう、この盛り合わせを見たら、我慢できませんよね。
3年ぶりです。
60過ぎております。
明日死ぬかもしれないです。
最初に飲み物はどうするか聞かれて、いや、お茶をお願いします。どうせ、夕ご飯に飲むしね、昼から酔っ払うのもね、なんてお断りしていたのですけど。ははは…
冷酒を頼んでしまいました。
良く見てください。
地味ですけどね、もみじ葉の右後方にある「白ずいきの水晶寄せ」
涼し気な夏バージョンの羊羹じゃないですよ。
上品なお出汁がじゅわっじゅわ~っと広がったかと思うと、ずいきの繊細な繊維がサクサクと小気味よくて。これ絶品でした。
主役たちの陰で、丁寧に面取りされたお芋さん。
一番後ろのちまきはね、鰻と紫蘇の朴葉寿司なんですよ。
きっちり丁寧に巻かれたちまきを、ほどいて行くわくわく。
この子たちを、ゆっくり楽しみながら味わい、ちびりちびりと冷酒。
たまりませーん。
お造り
地魚のお刺身。
華やかな器と、添えられたツマがお料理を盛り立てています。
マグロが入っていないから、伊豆の海が脳裏に浮かびました。伊豆に来たんだな〜。
煮物
白髪ネギに隠れてる、お出汁の染み込んだ冬瓜を食べると、ゴロンゴロンと丸茄子。
中華のような和風のような。お茄子は皮までおいしくて、全員完食してました(笑)
ご飯と留椀
牛蒡と静岡牛の炊き込みご飯に、冷たい呉汁。
母がすり鉢で柔らかく煮た大豆をゴリゴリすって作ってくれたのを思い出しました。
母の呉汁は、大豆のつぶつぶいっぱいの食べ応えあるお汁でしたが、ここは豆乳を使っていました。
なるほど、こうして豆乳を使えば簡単にできますね。
デザートの前に、ふと目に留まった楊枝にはしゃぐ60歳前後の女子達。
かわいいでしょ。あまり見たことない楊枝です。
最後の甘味は、自家製黒糖の葛餅。
西表黒糖の黒蜜にきなこ。
民家の屋根を連想する素朴な見かけから、甘いだけの単純なお菓子かな? 甘いものか得意でない私は無理かも?と思いましたが、いつの間にかペロリと食べてしまいました。
もうこれだけで旅の大イベントひとつ終了!
雨が降りだしていましたが、おかげさまで心は晴れ。
ごちそうさまと、おもてなしに、ありがとうございました。
おまけ
翌日、花吹雪さんの前を通ると、「あんみつ」という魅惑の文字が(笑)
おいでおいでをしています。
素通りできませんでした~。
デザート部門は昨日とは別棟。打って変わってすっきりとした白い部屋でした。
真ん中の緑色は、甘い甘いメロン。
ひとつだけ残念が…ホイップクリーム。生クリームだったら嬉しかったな。
帰りの玄関を出ると、門へ続く小道で、男性お二人が木々のお手入れをしているところでした。どうやらご高齢の男性が体を気遣いながらも木々のお世話についてお若い方に指南していた模様。
こうやって、このお庭の美しさが保たれて来たのだなと思いました。
こんなとこにいて、すみません。と、ご高齢の男性。
いえいえ全然。
しっかり受け継いで行ってくださいね、心の中で思いました。
ゆったりまったり癒されました。
いつかお泊りで来れたらいいな。