シニアーゼ〜まるくるみらくる

60代は余生じゃない。荷物を降ろした新しい人生の始まりなのだ。

じいちゃんよ。それでいいのか

なんか解せないんですよ。腑に落ちないって言うか。ホントにそれでいいの? なんですよ。

じいちゃんの生き方が。

といっても、ドラマの中のじいちゃんなんですけどね。

ラジオドラマの。

 

主人公は中学生。

ただの中学生じゃなくて、数学に特異な才能を持つ少年。

数学ができすぎて数学しか好きじゃない、恐らく数学方面のギフテッド。

あまりにも数学ができるもんだから小学生時代にいじめに会い、それ以来引きこもったりしている。

その主人公が、あるきっかけで山奥に住み自給自足の暮らしをしている孤独な老人「じいちゃん」に出会う。

二人は、少しずつ距離を縮め、畑で作物を作ったり魚を釣ったり、じいちゃんの自給自足生活を一緒に楽しむようになる。「お前はお前のままでいいんだ」と諭すじいちゃん。そんなじいちゃんとの対話を通していつしか少年は心の成長を遂げ、引きこもりから脱出。本格的に数学への道を歩み始める。

といった内容なのです。

 

このじいちゃん、過去に何があったか知らないけど、人の目を逃れ厭世的にひとり壊れかけた小屋に住んでるわけですよ。

人様から見たらホームレス。(ラジオではこの言葉は使われてなかったけども)

少年の母親からも疎まれたりするわけですよ。

だけど少年にとってじいちゃんの存在はどんどん不可欠になっていき、いつしか少年の心の扉を開くんですよ。

 

しかし、ある日突然、じいちゃんは少年の前から姿を消します。

俺の方が引きこもりだったのかもしれないな、との言葉を残して。

どうやら昔はさっそうと活躍していた社会人だったけれど、なにかで失敗し世間が嫌になったみたいです。

 

で、どうなったと思います?

少年は引きこもりから脱却。

数学の才能を伸ばすべく、迷っていた進学を決意。

そして、姿を消したじいちゃんは・・・

なんと、探し当てられた娘さんに説得され、娘さんの家に引き取られていくんですよ。

はあっ?

てなりました。

ウトウトしながら気持ちよく聴いていた体が、思いもよらずに突然蓋を開けられたドラキュラみたいにいきなり覚醒しましたよ。

 

それが、じいちゃんにとっての引きこもりからの脱出?

今まで一緒に暮らしてもいない娘の家に転がり込み、娘の家族に気を使いながらひっそりと生きて行くわけ?

 

突然覚醒させられた私の中のドラキュラが、ガバと飛び起きました。

突然じいちゃんに転がり込まれた娘の繊細な夫なんか、一体全体どうするんですか。居場所がなくなるじゃないですか。このじいさん結構な頑固者なんですよ。おまけに、大切に育てて来たひとり息子なんてちょうど受験と反抗期の両方を迎えた手のかかるお年頃。いきなり現れた夢もチボーも失った結構な頑固者のじいさんと2LDKの狭っ苦しいマンションの中でうまくやれると思いますか?血が欲しい~ ⇦(注)娘の家庭設定については全て私の妄想です。

なんだかな~。

いやいやそこはもっとホラ、ドラマなんだし。

ヨレヨレになりながら辿り着いた場所で、偶然にもダイヤモンドみたいにキラリときらめくものを見つけたんだ。俺ももう一度新しいスタートを切ってみるよ・・・

みたいな未来、欲しかった~!

 

もうね、子どもが親の面倒を見るとかね、そういう時代じゃないんですよ。お嫁ちゃんお茶~とか言いながら、じいさんが縁側でハゲ散らかした頭を撫でつけながら隣のじいさんとほんわか縁側で碁を打ってる時代じゃないんですよ。

子どもは子供で自分たちが生きるのに精いっぱい。

じいさんもばあさんもフレイル期が訪れていよいよ立てなくなるその日まで、独り自力で立って生きて行く、生きて行かなきゃならん時代なんですよ。

 

「筋肉は裏切らない」とか最近流行ってましたけど、あれって「キミたちね、せっせと体を鍛えて自力で生きて行くんだよ。まずは足腰を鍛えておきたまえ。足腰の丈夫さこそ、これからの老後の必須条件」と今はまだ若いが粛々と老いている老年予備軍の30代や40代の皆さんへの密かな刷り込みなんですよ。

たぶん。

 

60歳になるまでせっせと年金保険を支払ってきたにも関わらず、65歳までリターンはないんですよ、ていうか、年金なんかを当てにできない時代がもうすでに幕を開けているんです。いえ~い!60歳でいよいよ定年じゃ~自由な暮らし~ぃ鼻ほじほじ~なんてやってたら心も体も路頭に迷うことになるかもしれないんですよ。

昨年末に、タモリさんが徹子さんに「来年はどんな年になると思いますか」と聞かれて、「新しい戦前じゃないですかね~」と言ったらしいですが、現在、還暦付近にいらっしゃる人々(私を含む)は、まさに今「新しい老年時代」を迎えているのです。

新しい老年時代が両手を広げて私たちを迎えているのでありますよ。

たぶん。

 

老年よ、大志を抱け!

立ち上がれ!じいちゃん。

少年が、しっかりと前を向いて歩きだしたと同じように、じいちゃん、きみもまだまだ前進しなきゃならんよ!

自給自足で生きられる実力に封印するとはなにごとぞ。

主人公を差し置いて、脇役のじいちゃんに思い入れるワタクシでありました。。。